第61章 【番外編】犬2
「ルルさん……」
「ひゃあっ!」
ジェイドさんに背を向けて、戸を開けようとしたら急に後ろから話しかけられて吃驚してしまった。
「そんなに驚いて、どうしたんですか?」
「な、なんでも、ないです…っ!」
「背中のホックが外れています。今閉めますね。」
優しい手付きで肩にそっと触れられる。
思わず肩がひくりと跳ねる。
きゅっと胸元が閉まる感覚がして、解放される。
「はい、どうぞ。」
「あ……ありがとう、ございます…。」
なんでだろう、なんとなく、期待してしまって、今私の顔は真っ赤で酷くて、きっとお見せ出来ない。
あの何もかも見透かされそうな紅い瞳が、今は怖い。
でも、背後の気配が遠退いてすごく寂しい。
なんなら今すぐ私から抱き締めたい。
それだけで少しは落ち着けるかもしれない。
でも、それ以上欲しくなったら、どうしようか……。
心臓がばくばくして、熱い。
振り返ると、ペンを走らせているジェイドさんがいる。
「どうしたんですか?やはり、調子が悪いですか?」
私の視線に気付いた彼は、私を心配そうに見つめる。
「ち、違います、その……」
否定したいのに、頭が沸騰していて何も考えられない。
私はジェイドさんに駆け寄って飛び付いてしまった。
完全にもう本能任せな動き。
今の私には理性なんてない。
一瞬驚いていたけど、すぐに私を抱き締めてくれる。
「大丈夫ですか?」