第58章 【番外編】その距離は
「すごい…」
ドレスアップしてもらった私は、会場に足を踏み入れた。
きらきらと目映い世界がそこには広がっていて、一庶民だった私は一生ありつけないと思っていた場所だ。
ジェイドさんにエスコートされ、ピオニー様にお会いすることになった。
「ルルか。見違えるな…。」
「陛下、私の未来の妻ですから。」
「わかってるって。ウザい。」
「私は陛下の挨拶が終わって、お席まで護衛をしますので、ルルさんはその間で食事をしてきて下さい。
その後一緒に回りましょう。」
「はい…。」
少しの間離れるのが寂しいけれど、お仕事だし、と自分を納得させて、私はジェイドさんから離れてホールへと降りた。
「ルル様、素敵ですわ…。」
「あ、ありがとうございます!」
一緒に普段働いている方に気付かれてしまい、申し訳ない気持ちになる。
「すみません…本来なら私も配膳しなきゃいけないのに…。」
「そんなことさせてしまいましたら、私達がジェイド様に殺されてしまいますわ。」
と笑いながら返されて、私もくすっとしてしまった。
ひとまずこっそり食事を取り、ジェイドさんの空き時間を待った。
「レディ、お一人ですか?」
不意に話し掛けられて驚く。
「あ、いえ、今待ち合わせをしておりまして…。」
「その間、少しお話だけでも…。」
「は、はい…」
断る理由も思い付かなかったので、ひとまず頷いた。
その男性は優雅な仕草ですぐに貴族の方とわかった。
結婚相手を求めて今回はここに参加したのだとか。
私の好きな音楽や好みを聞いてきて、最後に家柄は…と尋ねられた。