第57章 【番外編】好敵手
「気を付けていってらっしゃい。」
ジェイドさんにそう言われてお見送りされた。
いつもより落ち着いた色合いのワンピースを着て、私はその方との待ち合わせ場所に急いだ。
いつもカッチリとした軍服姿しか見たことがなかった彼は、普段着はとても爽やかで年相応に見えた。
「おはようございますっ!
お待たせさせてしまいましたか?」
「そんなことないですよ、今来たところ。」
とても爽やかな笑顔で彼は言う。
なんとなく、年の近いお兄さんという感じで安心する。
「ルルさんはいつもどういう所に行くんですか?」
「私もこの町で暮らして日が浅いのであまり詳しくなくて…。
そこのカフェは毎月新作スイーツが出るので、ジェイドさんとよく来てますよ。」
「じゃあそこでゆっくりしましょう。」
手を繋がれると、颯爽とカフェに入っていった。
いつも何してるとか何が好きとか色々聞かれたけれど、読書と劇はお互い好きなことだと知って、少しだけ共通点が見つけられて嬉しかった。
甘いものも特に嫌いじゃないそうで、今月限定の栗のお菓子も美味しく食べられた。
「美味しかったぁ!どうやって作ってるんでしょうね?
ジェイドさんにも食べさせてあげたいなぁ。
栗をペーストにしてお砂糖とブランデーでしょうか?
生クリーム入れても美味しそう…。」
と私は一人ではしゃいでて、くすくすと笑われて少し恥ずかしかった。
「ルルさん、本当に可愛いですよね!」
真っ直ぐにそんなこと言われると凄く恥ずかしい。
私は慣れない彼の爽やかさに戸惑いを隠せなかった。
商店街で、ついでに頼まれていたお使いをしていいか聞くと快く来てくれて、荷物まで持っていただいてしまった。
「メイドさんも案外力仕事なんですね、鍛練するくらい重いですよこれ!」
「私は結構配達にしてもらっているんですけどね…。ジェイドさんが心配だからって。」
「ルルさん、今日は俺とデートしてるんですから、他の人の名前、出さないでください。」
「あ、すみません……。」
急に真剣な顔になるから吃驚した。
次の瞬間には、もういつものわんちゃんみたいな方に戻っていた。
一瞬ジェイドさんみたいな雰囲気を出していて、少しだけ怖かった。