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互換性パラノイア【TOA】【裏】

第57章 【番外編】好敵手


気付いたらもう夕方で、お城に戻る時間だった。
とても楽しくてあっという間だった。
たまにはこういうお出掛けもいいなと思った、許してもらえれば……。
「ルルさん、ありがとうございました。
その、いい思い出になりました。
これで俺、貴女を吹っ切れます!」
「こちらこそ、ありがとうございました!」
お互い頭を下げてお礼を言う。
周りからしたら奇妙な光景かもしれない。
荷物運びますよ、と彼は倉庫まで来てくれた。
厨房をぐるりと回るとそこに大きな扉があって、階段を降りると食品置き場になっている。
荷物を仕分けしてもらって、自室に持っていくものだけを私は抜き取った。
「それ、何に使うんですか?」
「ケーキに少し入れるエッセンスですよ。
最近ジェイドさんにお菓子を作るのが日課になってて…
あ、ごめんなさい…!」
彼は少しだけ眉間に皺を寄せると、私に顔を近付ける。
「…?ど、どうしましたか?」
「やっぱり、ルルさんて、大佐の話をするとふわっていい香りがするんですよね。
木に咲く小さな花みたいな。甘いような…。」
「え?香り?」
前も誰かに言われた気がする。
ジェイドさんにだっただろうか?
熱くなった身体と打ち込まれる楔にあっさり意識が持っていかれそうな時に、そう耳元で囁かれたような…。
「また、考えてます?」
恥ずかしい……見つめられている状態で私はなんてはしたないことを考えていたんだろう。
いつものわんちゃんはそこにはいなくて、まるで血に飢えた獣が私の目に写る。
熱のこもったその瞳が、あ、いけない、と思わせる。
でももう遅くて…、私は彼に押し倒されて覆い被さってくる体重に逆らえなかった。
「…やっ!」
抵抗しようにも、両手を片手できつく抑えられ、何も出来ない。
「ど、どうしたんですか…?きゃっ!」
私の脚の合間に身体を捩じ込まれ、首もとを甘く噛まれる。
痛いというよりくすぐったく、ぞわぞわとした感覚が身体を巡る。
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