第51章 彼女の追懐
名前は持ち物からわかった。
檻の中で毎日話し掛け、成長記録を付けることになった。
毎日観察を続け、全く成長していないことにがっかりと肩を落とす。
何がいけないのか考えたが、あらゆる手を施し、最後に環境面ということに気付いた。
人間と同じように過度のストレスを視線によって感じるのではないかと。
急いで連れて帰った。
関係者には隠し子かと疑われ、当時遊びで付き合っていた女性に平手打ちを食らい、散々な反対を押し退けて彼女との生活を始めた。
食事を普通のものにし、子供の育児の本を徹底して読み、何が楽しいのか、何が悲しいのか聞き、本やおもちゃを一緒に揃えていった。
少女趣味などなかったが、小さな彼女はなんとなく魅力的にうつった。
可愛らしい容姿、毎日読み聞かせする本ではらはらと涙を流し、笑ったり怒ったり、段々と精神と身体が成長していく過程は見ていて興味を引かれた。
1年ほどだろうか、研究成果を学会で発表することになった。
既に実は情が移っていたため、あまりそんなことをしたくはなかったのだが。
発表を終えて、やはり続きは檻の中でやろうということになってしまった。