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互換性パラノイア【TOA】【裏】

第51章 彼女の追懐


『死霊使い』と名前が上がる頃だ。
私は被験体を探しに戦地やその跡地に赴いていた。
職業柄そういう場に行きやすい。
忌々しいあだ名が付いたがそんなことはどうでもよかった。
死臭漂うそこに、使えそうな死体はないか物色していると、一目で惹かれた。
日がそこだけ当たっているかのような、太陽のような輝きを放つ幼い死体。
息はもうなかったが、真っ白な肌と艶のある髪、儚く瞑られた表情。
目が釘付けになった。
内臓も傷付いた様子はなく、頭も無事だった。
この子しかいない。
すぐに運び出すことにした。
フォミクリーの実験は何度も失敗をしている。
もしかしたらまた化け物になる覚悟もしていたが、もしこの子がまた息を吹き返すのなら、そして成長過程が見られるのなら、それは願ったり叶ったりだ。
人類の夢である蘇生実験、まだなんの罪悪感のない私は研究者として意欲がどんどんと沸いてくる。
失敗してもこの手で葬るまで。
そこまでの決意をして彼女を被験者としてレプリカを作った。
雷が大きく鳴る日。
幼女は目を覚ました。
周りがぼんやりとしか見えないのか、私の目線と合わない。
以前のような化け物にはならない。
色素が少し薄いのと、幼い子供を使ってしまったからか、生殖機能と染色体の異常だけ少し見つかった。
大人になっても繁殖は望めないだろう。
今思えばそれは正解だった。
生物として孤立してしまう彼女を、人類として遺すのは危険だ。
しかし、当時の私は完璧な物を目指していたので少なからず落ち込んだ。
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