第42章 旅行1日目
客室に戻る前に、ショッピングモールへ足を運んだ。
南国風の街路樹は、船内の涼しさを少し和らげた。
吹き抜けで2階、3階と続くフロアは見切れない程様々な店が建ち並ぶ。
ルルさんは、遊園地のマスコットキャラクターの遂になっているぬいぐるみをずっと眺めていた。
「買って差し上げますよ。」
「……いいんですか?」
いつもは1回は遠慮してくるが、もう手に入らないと思ったのか、珍しく見上げて切なそうに聞いてきた。
その仕草に、私らしくない気持ちになる。
(今すぐ押し倒したくなりますねぇ。)
「あの…あそこの、今日の服装にしてくれるサービスもやりたいんですが……。
あ、も、勿論、帰ってから私のお小遣いから引いてもらっても構いません…ので…。」
と、言いつつ、ルルさんは料金表をちらっと見て、少しため息を吐いた。
ルルさんのお小遣いだと、少し厳しい範囲の値段だった。
「私がルルさんの我が儘を拒否するわけないじゃないですか。」
「ありがとうございます…!」
頭を撫で、すぐに手縫いの職人に依頼する。
待っている間、手縫いで着々と進められていく工程を、瞬きせずにルルさんは見ていた。
街路樹の出店に怪しい物売りがいて少し気になる。
片言でどくとくの喋り方をしていた。
「キムラスカ隠れ名物もあるよー!」
「ああ、ここで売っているのですね…。」
最近使っていないような、とバスルームのシェルフにしまった物のことを思い出した。
「彼女ですか?奴隷ですか?」
「恋人ですよ。」
「失礼しましたー。可愛いお嬢様に、スケスケの下着いかがですかー?」
細い繊細な糸で出来た生地と薄いレースのそれは、確かに着ている意味もなさそうなくらい反対側の景色が見えた。
「かわいい。いろいろはかどりまーすー。」
「頂きましょう。」
なんとかルルさんには気付かれず、それを頂いた。
いつ使おうかなど、策を練りながら元いた位置に戻った。
着々と出来上がるぬいぐるみの衣装は、私のものは終わり、ルルさんの服装に入っていた。
可愛らしいうさぎさんフードコートになっていく姿に、私も感動した。
最後に針金で眼鏡を作っていただき、外れないよう縫っていただいた。
「わあっ!可愛い…!!」
顔が綻ぶルルさんが可愛かった。