第41章 ジェイドさんと旅行1日目
「休み取ってどこ行くんだよ。」
みっちりスケジュールを詰めてお仕事を終わらせたジェイドさんを不審そうにピオニー様が見た。
「ケテルブルクです。」
「なんだ、知ってるところに行くのか。」
「うさぎさんフードを被ったルルさんをこの目に焼き付けて帰ってきますので、楽しみにしていて下さい。」
「勝手にやってろ、犯罪者。」
お二人のやり取りを見ながら、ワゴンからパウンドケーキを取り出して盛り付ける。
「ピオニー様は雪ってわかりますか?」
「ケテルブルクにはそこら辺中にあるぞ。」
「へえ…!」
「おいおい、ルルまさか、雪、見たことないのか?」
「ええっと……、こう、綿みたいな物が落ちてくるイメージしか……なくてですね…。」
先日ジェイドさんにしたものとほぼ同じ回答をすると、ピオニー様は大笑いしながら机を叩いた。
「それはぶりっ子過ぎるだろう!
天才だな、回答に花丸をやろう!」
ジェイドさんと同じ返事を頂けるとは思わなかった…。
私は顔を真っ赤にして俯いた。
「まあでも、ルルは記憶がないって言ってたもんなあ。
ついでにそのまま、記憶探しの旅にでも出ればいい。」
「陛下、そんなこと言って、お一人で仕事が回りますか?」
「……ああ、今は困るな…。そのうちだな。」
「お気持ちだけでいいですよ。私は今の暮らしが一番ですし。」
それは心からの本音だった。
親に会ってみたいとか、そういう気持ちはなくはなかったが、それよりも兄が二人出来たみたいなこちらの生活はとても楽しかった。
(色々あったけど……、毎日幸せだよね。)