第37章 61日目の終末
ずっと刺激され、生理的に鎌首を上げるそれは、彼女の手の中で少しずつ固くなっていく。
「私は、あの地獄の中でも比較的良い立場におりました。
若いうちからそこで働くとそういう長所も少なからずありますの。
貴方もご存知かと思いますが、権力者や強者などは、若くて可愛い女性を好みます。
勿論例外もありますが、私達のような『商品』は、若さや見た目ですわ。
若くして入所すると、古くからのお客様がついてきてくださいます。
それはとても幸せなことですわ。
でも……。」
「そこにルルさんが入ったのですね?」
あの忌々しい事件をふと思い出す。
怒りと憎悪と悲しみ、たくさんの感情が働いて、漸く彼女の大切さにも気付けた。
ずっと大切にしていこうと決めていたのに、今、きっとまた悲しむに違いない。
「そう、あの女…。
地獄の中の仏とは、昔の人は良い言葉を残しました。
私に取っては、無くてはならないお客様がいらっしゃいました。
とても優麗で、強かで、どこか貴方にも似ていました。
一月に一晩は大枚を叩いて私に会いに来て下さいました。
まるで恋人のように抱き合い、まぐわい、いつもとても幸福な一時を過ごしておりましたわ。」
彼女は嬉しそうに他の男の話をする。
それでも私を触る手は決して止まらず、巧みに自分の服も脱ぎ、私の眼鏡をゆっくりと外す。
何年もそんな生活をしていたのだろう。
とても素早く熟練された腕前に感心しながら話の続きを促した。
「でも、あの女が来てから……毎日いらっしゃって、私ではなく、あの女を……っ!」
「妬けますねぇ。」
自分にも言える台詞だったので、思わず笑みを溢しながら言ってしまった。
「だから!私は、次に父に会ったときに言ったの!!
あの女の恋人を見付け出しなさい、でないとお金は全部私の物にすると!!
父は必死だったでしょうね!!?
まさか貴方が慰みものに使ってたペットちゃんだなんて気付かなかったって言ってたし!!?
笑っちゃうわよねぇ?後から聞けば、あの女は……父が連れてきたそうね!!?」
いきなり形相が変わり、まるで別人のようになった。
「あのクソ親父は何回私の人生を狂わすの!!?
もううんざりよ!!!
アンタと結婚して全てに復讐しようとしたのに!!
っ……なのにっ……。」
美しい髪型をかきみだし、涙をぼろぼろと溢しながら彼女は続けようとした。