第37章 61日目の終末
薄気味の悪い赤色で統一された部屋は、私の嫌悪感や怒りをそのまま写し出しているようだった。
「お見合いを引き受けて下さるそうで嬉しいですわ。」
「そんな方がどうしてこちらに?」
「勿論、貴方を探していましたの。」
「探して、どうしたかったのですか?」
「言わなくてもわかるでしょう?」
彼女はそう言うと私の首に腕を回す。
豊満な胸が私の身体に密着する。
口付けを迫られてはいるが、気付かない振りをして彼女を抱えてベッドに投げた。
「やだぁ、お気の早い…。」
恍惚の表情で言うそれに、私は呆れたように笑った。
「貴女は、誰なんですか?」
「誰って、父に聞いた通りですわよ?」
私の上着のボタンを一つ一つ器用に外しながら答える。
「あそこに女性が住んでいた記録はないはずですが。
誰も貴女の存在を知りません。」
「私は別居していますから。」
「どこに?」
「ケセドニアですわ。」
漸く全てが繋がったような気がした。
尚も私のシャツのボタンをまた一つ一つ外していく女を組敷きながら見つめる。
「お父様とは、何歳からご別居を?」
「いつだったか、もう覚えていませんわ。」
ベルトを外され、スラックスを寛げられる。
首に慣れたように的確にやわやわと指を這わされる。
「実際に血は繋がってますわ。
お父様がどうしてもお金が必要と仰るので、私はそこで働いて父にお金を送っていますのよ。」
「苦労していらっしゃる…。」
指が少しずつ下へ移動していく。
「あの地獄から解放される最後のチャンスなのです。」
下着越しにゆっくりと手が上下に動く。
私は淡々とそれをひたすら見つめる。
「お父様に認められるとか、そんなことはどうでもいいのです。
あの地獄から解放されて、貴方を奪って、あの女に復讐出来る……。
最高のシナリオなんですの。」