第34章 60日目
午後は特にお客様がいらっしゃるとは全く聞いたことなかったんだけれど、私が前お世話になっていたお屋敷のご主人様だった。
突然ジェイドさんの居場所を聞かれて、執務室を教えてあげた。
とても怒った様子で、私は少しびくっとしてしまった。
急いでお茶とお茶菓子をワゴンに用意して私も執務室へと急いだ。
「見合いを断るとはどういうことかね!?」
(お、お見合い!?)
お部屋の外にも響く大きな声で確かに聞こえた。
「この犯罪紛いな写真をバラ撒いていいと言うのか!?」
「お言葉ですが、身元不明のお嬢様と結婚するつもりはこちらにはございません。」
「なんだと!?正真正銘私の娘だぞ!!」
(あのお屋敷、お嬢様なんかいたかな…?ご別居だったのかしら?)
眉間に皺を寄せて考え込むと、隙間から見えるジェイドさんもそうしている。
(ジェイドさんも疑っているのか…。)
「遺伝子鑑定をしても断言出来ますか?」
「ああ、構わない。」
「そうですか。こちらも構いませんので。」
「明日の号外にでも載せよう…。覚悟しておれ……。」
大きな身体がこちらに向かってきた。
私は迷わず飛び出してご主人様を止める。
「だ、だめです…っ!」
ジェイドさんが頭を抑えている。
私がそれを望んでいなくても、私はそうするしかなかった。