第30章 58日目
「ぁぁ!あの綺麗な人まだいるぅっ…。」
罰を取るか、邪魔するの前提で割って入るか悩んでいると、ジェイドさんがその女性に顔を寄せた。
なんか、ショックとか、そういう言葉では何も片付けられなかった。
「ど、どうしよ…?」
どうしようも何もない。
私は今度こそ追い出される。
というより、つい先日漸くお互いの気持ちを確かめあって恋人になれたというのに、この展開は早すぎておかしくないだろうか?
私はやはり遊ばれていたのか…。
一気に落胆する。
怒りも勿論あった。
(ジェイドさん、ちゃんとそういう方いるのに…私にもそういうこと言って…して…最低……。)
私は都合のいいお人形でしかない。
そのことを忘れて、うぬぼれていた。
涙すら出ないほど、悲しくてつらかった。
ジェイドさんといた方がいなくなって、やっと私は近くに行けた。
「ルルさん、遅いですよ。
はい、そこの噴水で罰ゲームしましょう。」
「っ!い、いやです!!!」
「?」
いつもの恥ずかしい混じりの拒否ではなく、本気での拒否だったことにジェイドさんが驚いている。
「どうしたのですか?ルルさん。」
「ジェイドさん、私に隠し事をしていますよね。」
自分でも驚くくらい、ピリピリとした聞き方をしてしまった。
「今はしていますねぇ。」
「!」
なんとも思っていないのだろうか。
私は驚きと怒り、共に感情が高ぶっていく。
「なんで言わないのですか!?」
「現段階で、貴女を傷付けない方法がわからないからです。
その方法を思い付いてから、全てをお話します。」
「…なっ…!そういう上手なことを言って……他にもそういう方がいるんですよね?」
「…?ああ、ルルさん、先ほどのやり取りを見ていらしたのですね。」
「な……、なんで言わないのですか!?そういう方がいるって…。
私はやっぱり、ジェイドさんにとっては都合のいいペットだからですか?」
「私にはルルさんしかいません。」
ボタンの掛け違いみたいにお互いが話を上手く理解できない。
「先程の方も…」
「もういいです…聞きたくありません…。」
「聞いてください。」
手首を捕まれる。
前頂いた可愛いブレスレットが痛い。
私の脳内ではさっきの女性に顔を寄せたジェイドさんが離れない。