第26章 50日目の反動
幻覚剤は、身体のどこからも接種出来るが、ルルさんは即効するように首の動脈付近に打っていたという。
死のリスクもあるそうだが、それくらいの恐怖だったのだろう。
毛細血管からでも身体に回るそれは、素人が適当に打ってもそこそこの効果が得られるだろう。
薬は脳へと回ると、神経を刺激して、怖いものを理想へと変化させる。
確かに精神疾患なら幻覚を落ち着かせる物として使われている、一応、合法薬ではある。
口から飲むのは、前に頂いたキムラスカの隠れ名物で間違いないないだろう。
「えっと、いい香りのお酒みたいで、こう、コーヒーシロップみたいな入れ物で、いつでも飲めるようにしてあるんです…。」
とルルさんも言っていた。
何回かすると体液と共に外に出る薬のようだったが、こちらも過剰摂取すると、頭がぼんやりして頭痛が慢性化する人もいるそうだ。
色々と趣味で手を出していた薬草学の話をしながら二人で図鑑を眺めた。
なんとなく、問題の解決は見えたが。
「ルルさん、少し辛いと思いますが、今からこの薬草を使って幻覚剤を抜きます。」
「…はい、お、お願いします…。」
彼女はこくんと頷いて、覚悟を決めてくれた。
薬草を煎じて湯で飲ますと、まず発汗作用が始まる。
そこから、精神患者が見るような怖い幻覚が見える。
案の定、彼女もまたそうだった。
この恐怖の中、何時間も耐えてもらうことになる。
また、ルルさんの場合は、過剰に接種した媚薬の効果も出てしまうため、震える身体を抱き締めながら緩やかに指を使って慰めていく他になかった。