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互換性パラノイア【TOA】【裏】

第26章 50日目の反動


ルルさんと戻ってくるのには5日ほどかかってしまった。
タルタロスならもう少し早く帰国出来たかと思うが、今回は極秘での往復だった。
身綺麗にし、顔の痣に化粧し、派手なものは手当、手首には花をあしらわれたブレスレットを付け、気持ちを落ち着けたところで出立した。
自室に到着すると、ルルさんの荷物は既に配達され、1か月前の元の状態に戻した。
部屋に案内するとほっと一息ついたのか、そのまま彼女は倒れて深い眠りについた。

「お疲れさまでした…おかえりなさい。」
聞こえていないだろうが、言わずにはいられなかった。
ブランケットを掛けてやり、私は部屋を出て、元凶の元へと足早に訪ねた。
彼は土下座して謝罪をしてくれたが、到底許せるものではなかった。
他人に対していつも冷ややかな怒りしか感じなかったが、それは炎のように燃え上がってはいた。
しかし、彼がいなくなって困る者もいると考えると、始末は不可能だった。
陛下にもとても反対されてしまったのもある。
燻すような気持ちを持ち帰り、彼女が目を覚ますまでゆったりと過ごすことにした。
無傷とは言えないが、命だけでもあってよかったと一息つくことが出来た。
しかし、彼女が起きてから、新たな問題が発覚する。

「幻覚剤?」
「医者によるとな、幻覚剤の副作用が出てるらしいんだ。」
城内医がルルさんを診てくれた。
特に変わった様子はなかったが、血液検査で異常な数値が出たということだった。
「精神疾患者用の幻覚を見せなくなる薬なんだが、常人に打つと逆に見るようになるんだそうだ。」
「ああ、一部の魔物から取り出せる成分で作る物ですね。」
「そうだ。しばらくは変な行動を起こしたり、いきなりうなされたり怖がったりする、と言うところまでは聞いた。」
陛下は懐から薬草の枝を渡してくる。
「でだ、これが特効薬だそうだ。お前のが詳しいだろ。」
「ありがたく頂戴します。」
陛下の後ろから診察が終わったルルさんがしおしおと出てくる。
「あの、ごめんなさい…私、あそこでのお仕事が怖くて……それで、そのお薬射すと、楽になれて……。」
申し訳なさそうに小声でそう言う。
「これ食べて早く元気になりましょう。」
ルルさんを引き取り、手を繋いで自室に戻った。
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