第20章 君のためと
朝、起きるとまだ智くんは夢の中。
口を小さく開けて、
スースー寝息を立てて。
起こさないように、
ゆっくりゆっくり歩いて行く
智「……どこ行くん、」
ぎゅ、と足を掴まれる。
眠そうな目を私に向け
ふにゃふにゃ笑った
智「…おはよ」
「起こした?」
智「夢で起きた。正夢」
どんな夢?と聞くと、
ちょいちょいと手招きされ
座って顔を近づけた
智「…が居らんくなる夢や」
「…ええ?」
智「せやから、今日は離したらん!」
ぎゅーと言いながら抱きついて
私を布団に引きずり込む
智くんが薄々気づくことは分かってる
ほかの、みんなも。
いや、大毅と流星は案外、
鈍感だから気づいていないかも。
智「ふふ。一生俺のやもん」
「へへ?そうなのー?」
智「そうなの!そうやなくても
絶対いつかそうしてみせるねん!」
カッコええやろって
得意げに笑う。
「…そうなるといいな」
思わず呟いたその言葉に、
さすがの智くんもびっくりする。
智「兄妹やなくなったら、
結婚かて簡単に出来るのにな。」
「簡単じゃあ、ないよ」
智「家族って形は出来上がってんねん
あとは愛を育むだけやん。」
「うーん…、家族の形はそれぞれだよ」
智「俺はどんな形の家族でもええ!
好きな人とやったら、なんでも」
好きやもん、って
智くんがニコニコして言って
また顔を近づける
智「…キスやって、簡単に出来るねんで?」
「と、智くんっ!」
智「ふふ、冗談やん、怒らんでやぁ」