第20章 君のためと
どうしよう。
ドキドキして苦しい。
好きだと言った、望が。
でも、家族としてだと言い直した。
なのに私は言えなかった。
実兄に会ったんだと
また会いに来ると言われたと
望にすら、言えなかったんだ。私は。
思い出せずにいる昔の思い出も、
櫻井さんは覚えてるんだろうな
遊んだこと、両親とのこと、
どこに行ってどの遊びが好きだったか。
温もりだけを覚えてた私に、
櫻井さんは何を思ったろう
「分かんないよ…」
どうすればいい?
話してスッキリすれば、
この気持ちは晴れる?
Plulu...
電話が鳴り、画面を見ると
そこには淳太くんの文字
淳「あ、もしもし、?」
「うん。お仕事どう?」
淳「順調やで〜!濵ちゃん居るおかげで」
大助かりやで〜と
明るい声色に少し安心する
淳「は、大丈夫か?
照史らが心配してるみたいやからさ」
「みんな、が?」
淳「なんか元気ないみたい〜って。ちゃう?」
俺の思い違いかな、と
不安そうな声に
私も思わず涙声になる
「…へ、いきっ」
淳「平気ちゃうやん、どうしたん
なんか皆に言えへんこと?俺には言える?」
優しい口調に、
私は思わず言ってしまった
「本当のお兄ちゃんに、会った」
だけど淳太くんは驚くわけでもなく、
知ってたみたいに頷いた
淳「うん、そっか、そら言えへんわな」
「驚かないの?」
淳「驚かへんよ。実兄がいる、って
俺はに会った時から知ってたもん」
淳「いつか、引き取りに来ることも」