第13章 昔話〜小瀧望〜 *
流「あんなあ?人間早々、嫌われへんで
やんちゃとかしてたらまた別やけど」
よしよし!と
大袈裟に撫でる流星。
「なんでここがわかったん?」
流「オカンの事、大好きなんやなあって思って」
ほらここ、
と見渡したその先は、
オカンと1度だけ来た町の景色。
やっと思い出した記憶
「俺…」
忘れてた。
オカンはここに俺を連れてきて、
『ママ、頑張るから。いっぱい頑張って
望が幸せや言うて笑えるぐらいな!』
そう言って抱きしめ抱っこしてくれた。
流「忘れたらあかんで。
望の事、大切に思っとるんは、
俺だけちゃう。みーんなやで!」
淳太くん、
いつも俺に話しかけてくれて
照史くん、
自分のおかず分けてくれて、
濵ちゃん、
みんなの輪の中に入れてくれて、
しげ、
一緒に騒いで怒られて、
神ちゃん、
一人ぼっちの俺の面倒見てくれて、
流星、
いつも俺の傍にいてくれてた。
俺、大切にされてたんや。
なんで気付かへんやったんやろ?
いつも近くにあったのに。
なんで見てへんかったんやろ?
流「小さな幸せってさ、大きな幸せに
比べたらちっぽけやなぁって思うけど
その小さな幸せに気づいた時ってさ、
大きな幸せの何倍も幸せになれるよなー」
思わへん?
「おん、分かる」
流「塵も積もれば何とか言うしな!」
山となるやろ、と笑いながら
歩く帰り道。
いつか来るんかな。
離れ離れになってまう日が。
それでも俺、不思議やねんけど
怖くなんかないねん!
やって気づいてしまってん。
流「帰ったら寝よ〜」
「まずはご飯やろ」
小さな幸せ、ってやつにな。
塵も積もれば山となる、
小さな幸せに気づいた一つの物語。
小瀧望(6) 終了