第11章 夢の中でも【長谷部】
「主、読んだ本は棚へ片付けて下さい」
「主、またこんなに頼んで」
「ああ、もう!主~」
私の隣で忙しそうに働くのはへし切長谷部。
近侍であり私の好きな人。
うるさいけど、私の事を一番考えてくれる。
「ねえ、長谷部は私の事どう思ってるの?」
「それは勿論お慕いしております」
「それだけ?」
「はい」
私は恋でも、長谷部は私の事主としてしか見ていなかった。
「どうしてですか?」
「何でもない…」
自分で聞いておいてなんだけど聞いたことに後悔した。
「長谷部、皆の所に行っていいよ」
「失礼します」
障子が閉まり静かになる。
目の前の書物には手が入らず時間だけが過ぎていった。