第2章 かわいい【加州清光】
「ねえ、主~かわいい」
今日の近侍である清光が私の方に自分の爪を見せてきた。
鮮やかな紅で塗られた爪。
「うん。かわいいよ、清光」
「本当に?」
「うん。本当だよ」
「ありがとう、主」
ご機嫌よく私の部屋を出て行き、内番指示に行ってしまった。
がらんとした部屋。
ふと目の前に置きっぱなしの清光の爪紅。
筆を取り、片手の人差し指の爪に塗ると肌色の爪は鮮やかな紅に染まった。
「清光と同じ色…」
一つ塗り終わり、手を太陽の方へかざしてみる。
「本当だ…主、俺と同じだね」
「……き、清光!?」
私の背後にはいつの間にか戻ってきていた清光がいた。
「他のは俺が塗ってあげる」
「え…い、いいよ…後で鍛刀もしないといけないし」
「いいから、いいから…」
私の爪は清光と同じ色になっていく。
「ほら、主もかわいくなった」
「ありがとう、清光」
「これで俺と主はお揃いだね」