第4章 いつかは【一期一振】
【一期】
先ほどまで賑やかだった本丸は今、自然の音が流れていた。
庭や稽古場で聞こえていた弟たちは何処へ?
廊下を歩いていると向かいからは薬研の姿。
「薬研、他の弟たちはどこに居るか知らないか?」
「あいつらなら…」
「ありがとう」
薬研の指す方へ歩いていく。
自室の近くまで来ると、縁側に座っているのは鯰尾と骨喰。
「あ、いち兄だ」
「内番お疲れ様」
「ああ。他の弟たちは?」
二人に聞くと、鯰尾が人差し指を立てしぃーと。
骨喰は弟たちの部屋を指していた。
そっと覗いてみれば、弟たちが寝転がっていた。
その中心に居るのは主だった。
「主!?」
「あ、一期。内番お疲れ様」
弟たちは気持ちよさそうにお昼寝中らしい。
「稽古の後に遊んでたから疲れたみたい」
「そのようですね…」
はだけている毛布を直しながら主の元へ。
「主、それは?」
主の片手には糸の通った針、反対の手には弟たちの着ている服があった。
「これ?この子たちの服、稽古だったり遊んだりでボロボロだったから直してるの。ほら、本丸(うち)貧乏だから…」
そう笑う主の指先には絆創膏と呼ばれる貼り物がしてあった。