第3章 大好きな人【加州清光】
右の耳元で揺れるのは清光のイヤリング。
右手を添えて目を閉じれば溢れてくるのは清光と過ごした日々。
『また失敗したの?しょうがないなぁ~主は』
『上手に出来たね、主』
『ほら、見てよ主!』
『安定来ないね~』
『主が拗ねないでよ…俺だって怒ってんだからね!』
『またこんなに買ってきて…今回だけだからね』
資材もなければお金も無い時から清光と過ごしてきた日々は楽しい時もあれば辛い時もあった。
ここまでこれたのは清光がいたから。
清光が皆を呼び寄せてくれたから今がある。
でも…
清光が居なければどんなに楽しい事も心から楽しめない。
いつの間にか私の中で清光の存在が大きくなっていた。
「早く会いたいよ……清光」
「なぁに泣いてんの?」
返ってきたのは聞き慣れた声。
顔を覆っていた手をずらし、地面に写るのはヒールのある黒い靴。
そんな靴を履くのは彼だけ。
ゆっくりと顔をあげる。
「ねえ主、手入れ…してくれる?髪も、服も…爪も傷んじゃってさ…」
ほら見て…と、服の襟を掴み私をいつものように見つめる。
縁側で掛けていた腰を上げてゆっくりと足を進める。
「きよ…みつ……清光!」
「ちょっ!主…いきなり飛びついて来ないでよ…俺、怪我してんだよ?」
「清光、清光!」