第20章 《裏》遊女ちゃんの初恋【土方十四郎】
玄関に向かうと、
たくさんの隊士がいた。
その中に、
つまらなそうな顔をした、煙草を吸っている人がいた。
一瞬、時が止まったのかと思った。
ーー十四郎さんだ。
十四郎さんがいる。
話し掛けたい。
話したい。
そんな気持ちを押し殺して、私は部屋へと案内した。
宴会が始まると、
辺りは騒がしくなった。
月詠は、すごく緊張しているのか、
肩が震えていた。
フッと微笑んだ後、 私は局長と呼ばれている人の元へ向かった。
夏希「こんばんは。夏希と申します。」
固い挨拶をすると、明るい声が返ってきた。
近藤「おっ!えらい別嬪さんだなぁ!俺は近藤だ!よろしくな!」
と言われた。
思ったより優しい人で安心した。
夏希「お酒、注ぎましょうか」
近藤「ぉぉ!すまんな!ありがとう!」
などと会話をしていると、
奥の方から月詠の叫び声がした。
月詠「なんでキサマがいるんじゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」
夏希「…なにかしら……。」
私はスッと立って 月詠の方へ向かった。
夏希「月詠…。どうしたの…。」
私が怪訝そうに聞くと、
月詠が呆れた顔でこちらをみた。
月詠「あぁ…、夏希か。悪かった。叫んでしまって」
夏希「いえ、気にしないで。」
月詠「……。このモジャモジャがいたから、叫んでしまったのだ…。」
と指を指す方向へ向くと、
本当に、モジャモジャがいた。