第2章 初恋(木兎光太郎)
その日の部活が終わったあと、
練習にあまり身の入っていなかった木兎に
赤葦がつかつかと歩みより、言った。
『木兎さん、春高予選も近いんですし、
いつまでもそんな調子じゃ困ります』
「……」
自分でも自らの現状が分かっているのか、
木兎は何も言い返さない。
『何でそんなに悩んでるんですか…
って聞くまでもないですね、
どうせ唯さんのことなんでしょう』
木兎は俯いた。
「だってよぉ…」
『はい?』
「だってよぉ、何ヶ月も前から
ずっとアタックし続けてたのに、
今日まで彼女いると思ってましただぁ?!
俺もうどうしていいかわかんねぇよ…」
『別にアタックし続ければ
いいじゃないですか。
全国で五本の指に入るくらいの
スパイカーなんですから』
「バレーとはちげぇんだもん…」
そう言ってしょぼくれる木兎に、
普段は温和な赤葦も
だんだん腹が立ってきた。