第1章 想いよ、届け(及川徹)
『何二人とも辛気臭い顔してんだよ』
唯と立ち尽くしていると、
岩ちゃんの声とともに
俺の方にだけ拳骨が降ってきた。
「うわ!びっくりした!
いきなり何すんのさ岩ちゃん」
『おまえがあまりにも
いつも通りじゃないからな』
「それならそれでもうちょっと
優しく励ましてよ、そんなだから
岩ちゃんはモテないんだよ!」
『うっせぇボゲェ』
『…あはは……!』
…ん?笑い声?
見ると唯が声を上げて笑っている。
唯の笑顔を見るのも
ほとんど一年ぶりみたいなもので、
懐かしくて思わず見つめてしまった。
「……。」
俺からの視線に気づいた彼女が急いで言う。
『あ、ごめんね!
なんか、すごく懐かしくて思わず…』
彼女が同じ気持ちでいたことに、
少し幸せを感じて、
緊張で冷えきった体に温もりが巡り出す。