第1章 想いよ、届け(及川徹)
動揺していられたのも一瞬だけで、
それからの一時間はあっという間に過ぎた。
これまではお互い話すのを避けていたけど、
一緒に主役をやる、しかもそれが
ほとんどぶっつけ本番となると、
俺にとっては好都合なことに
話さない訳にはいかない。
まずは唯の衣装を合わせて、
裏方のコたちが微調整して、
その間に唯はセリフを覚え…
…あれ?もう覚えてる?
「…もう、覚えたの」
緊張を隠して話しかける。
『あ、えっと、うん。
ていうか、実は初めから覚えてたの』
「え?」
『徹が主役やるんだろうなって
思ってたから、台本が配られてから
役が決まるまでの間ひとりで練習してた。
まさか私が主役になれるとは
思ってなかったけど…』
(それって…どういうことだよ…)