第1章 想いよ、届け(及川徹)
「はぁい、みんな今日もありがとう!
及川さんすっごく嬉しかった☆」
そう言って微笑めば、
一斉に歓声を上げる女のコたち。
自分を見てくれている人が
こんなにいること、
もちろん悪い気はしない。
でも、何度目をこすってみたところで、
やっぱり一番いてほしいあのコは
ここにはいない。
(唯……)
『おいクソ川!さっさと行くぞボケェ!』
「え、岩ちゃん、
だってもう練習終わったんじゃ…」
『監督が呼んでるって何回言ったら分かんだ
このチャラ男が!!!』
「あーもう分かったよぉすぐ行くから!」
努めて明るい声で返事をし、
笑顔をつくった。
『じゃあまたねっ☆』
女のコたちに手を振って、
岩ちゃんの方へ向かいながら、
俺は一瞬脳裏に浮かんだ懐かしい笑顔を、
急いで頭の隅に追いやった。