第9章 丸焼き×sushi×失格!?
それに気づいていたからこそブハラさんは今、彼女を止める為に動いたのだ。
「だってさぁ、俺なら腕の2、3本へし折るだけだけど、」
どうやら顔に出ていないだけで、ブハラさんもかなりお怒りなのかもしれない。
「メンチがやったらコイツを料理しちゃうだろ?」
料理、という単語を恐いと思ったのはこれが初めてだ。
メンチさんはそんなブハラさんの諭すような言葉に顔を背けて黙り込む。
『へぇ~…、その料理ってやつ、ちょっと見てみたいなぁ』
今の今まで一言も喋っていなかったくせに、こんなところにだけは反応するのか。
私の隣に立って意地の悪い笑みを浮かべるキルアに呆れてしまう。
「たっく、素人はこれだからイヤなのよね……」
メンチさんの言う素人、とは誰をさす言葉だろう。
トードーか、はたまたキルアのことなのか、それともこの場にいる全員なのか。
「わかったわ。255番、アンタに美食ハンターがどうゆうものかよくわからせてあげる…」
やはりと言うべきか、さっと立ち上がったメンチさんの両手には、丁寧に手入れされている事が見て取れる包丁が二丁握られていた。
「他の受験者達も、お土産替わりに見ておくといいわ」
彼女はそのまま自分の腰につけてあるホルスターのようなものにそれを仕舞って静かに口を開く。
「1時間程待ってて頂戴」
「…1時間?」
その言葉を不思議に思ったのか、トードーは瞬きをしながら聞き返した。
そんなトードーの横を素通りし、建物の外へと出て行くメンチさん。
周りの人達は彼女が一体何をしようと言うのか、全く検討もつかずに困惑しているようだった。
建物の外で立ち止まったメンチさんは一度大きく伸びをすると一瞬でその姿を消した。
「はっ、速ぇっ!」
「どこ行くつもりだ…?」
『……どこ行ったんだろうね?』
隣に居たゴンが誰に聞くでもなくそう呟くから、
『さぁ……どこだろうね?』
私も首を傾げてそう言い返した。
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