第9章 丸焼き×sushi×失格!?
扉の向こうに現れたのは、ソファに座り悠然と足を組んでいる女の人。
女の子なら誰でも憧れるような体型のその人は、とても個性的な髪型をしていた。
そして、その後ろで地面に座っているソファよりも横幅が広く見える大きな男の人。
この人達が次の試験官なのだろう。
ガルルルル ぐるるるる グォラルルルルル―――…
ここまで聞こえてくる奇妙な音は、どうやら男の人のお腹の音らしい。
てっきり動物か何かの鳴き声だと思っていた。
「おまたせっ。どう?お腹は大分空いて来た?ブハラ」
唖然としている受験者達には構いもせず、女の人は自分よりもはるかに大きい男の人を仰ぎ見て言った。
「聞いての通りもうぺこぺこだよぉ、メンチぃ~」
ブハラと呼ばれたその人がお腹を鳴らしながら言うと、メンチさんは私達に視線を戻して笑みを浮かべた。
「そんな訳で、二次試験の審査委員はあたし達“美食ハンター”が担当するわ!」
聞き慣れないその言葉に真っ先に反応したのは、近くに居たゴンとレオリオさんだった。
『『びしょくはんたーっ?』』
私も同じように首を傾げていたので、2人の発言は正直有難い。
『美食ハンターとは、世界中のあらゆる食材を探求し、さらに新たな美味の創造を目指すハンターのことだ』
クラピカさんが辞書に乗っていそうな答えを返してくれ、言葉通りの意味かと1人納得する。
『もちろん、ハンター自身も超一流の料理人だ』
そう言われ、今日口にしたのはチョコレート一粒だけだったことを思い出す。
次の試験内容が料理なら、こっそり摘み食い出来るかもしれない……。
急激な空腹感からか、自分でも笑ってしまうようなことを考えていた。
「…ってことは、課題は―――」
まさかそれが現実になるだなんて思ってもみなかったけれど。
「そう、二次試験の課題は……料理よ!」
声高らかに宣言したメンチさんの言葉に応えるように、私のお腹の虫が鳴いていた。
*