第6章 ゲーム×涙×変化
そう、これはただの暇潰しでしかない。
だから今まで何度も言われてきた恨みや非難の色を含んだ言葉をこいつらに言われたところで、俺は何も思わない。
だってこいつらは、俺とはなんの関係もないんだからな。
けれどゴンやナナの口からそれを聞かなきゃいけないと思ったら、何故か少しだけ胸の奥が痛んだ。
その痛みの理由は、やっぱり今の俺にはわからない。
言われ慣れた言葉のはずなのに、なんでこいつらの口から聞くのはーーーーーー…
(イヤなんだ?)
《そんなの、ただの思い込み(違うっ‼︎)っ⁉︎》
俺は全力で“アイツ”の言葉を否定する。
この気持ちを否定されたくない。本気でそう思ったんだ。
それに否定していないと、俺が“アイツ”に呑み込まれてしまいそうで恐かった。
俺の腕の中に居るナナの嗚咽が小さくなってきているのに気付いた俺は、自分の身体をナナの体から少し離した。
ずっとくっついてるのは恥ずかったし、なによりナナの匂いをこれ以上嗅いでいたくなかった。
ナナの匂いを嗅いでると自分の身体から錆びた鉄の匂いがする気がした。
今までたくさんの人間を殺してきた俺とそんな汚い世界なんて知らずに生きてきただろうナナ。
その違いを突きつけられているみたいで、何となく嫌だった。
ナナの肩に乗せたままだった俺の手に、誰かの温かい掌が重なる。
掌の主は容易に想像出来たけれど、俺はそいつの顔を見るのが恐くて視線を地面に落としていた。
『ありがと…』
だからこそ耳に入ってきた言葉が信じられなくて、俺は恐る恐る顔を上げた。
『教えに来てくれてっ、助けてくれて……ありがとう…』
ナナは俺の目の前で涙を拭いながら綺麗に笑っている。
そして、いつの間にか俺の中から“アイツ”が消えていることに気付いた。
『行かなきゃ…』
思い出したように呟いたゴンの言葉に、俺は自然と自分の口角が上がっていくのがわかる。
あぁ、今やっとわかった。
『あるぜっ!あのおっさんを助けて、しかも一発逆転で先頭集団に追いつく方法』
俺はこいつらを助けたくてここに来たんだ。
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