第6章 ゲーム×涙×変化
ナナはハンター試験が始まる前に見つけた、俺と同い年か少し年上くらいに見える不思議な女。
着ている淡い色のワンピースはハンター試験に着てくるような服じゃない。
と言うか、あいつがこれからハンター試験を受けるだなんてとてもじゃないが思えなかった。
けれどその瞳に宿っている意志は、他の受験者達なんかよりもよっぽど強いように思えた。
ふわふわした見た目とは不釣り合いなその目も不思議と馴染んでいて、寧ろそれがないとダメな気さえした。
なんで自分がこんなこと思うのかわかんねぇけど、とにかくそう思ったんだ。
とりあえず顔はいい方だと思う。
実際周りの奴らの何人かは、場違いだとかじゃなくあいつをそうゆう目で見ていた。
その見た目からわかる奴は極少数だろうけど、ナナはかなり強い。
俺と同等……いや、たぶんそれ以上の力があるはずだ。
そこまで考えてハッとする。
なんで俺は、こんなにあいつのことばっか考えているんだ?
なんでこんなにあいつのことが気になるのか、なんで自分とは無関係のはずのあいつの後を追って元来た道を引き返しているのか。
いくら考えても答えは出ず、訳のわからない自分自身にイライラした。
いつもの俺ならこんなことするはずがない。
あいつなんか放っておいて、今頃試験官のおっさんの後ろを走っている。
だから自分で自分に言い聞かせる。
(俺はあいつを追いかけてる訳じゃない。あのデブなおっさんがウザいからちょっと脅しに行くだけだ)
頭の中で何度もそう繰り返しながらスケボーを滑らせた。
変わり映えのしない景色に飽きて来た頃、前からレオリオを連れて行ったおっさんが走って来るのが見えた。
ニヤニヤしながらこっちに向かって来るそいつの目の前でスケボーを止めると、俺の存在に気づいたおっさんの顔が焦りと困惑の色に染まる。
『何怯えてんだよ?』
無表情のままそう言ってやると、おっさんは渋い顔で俺から目を逸らした。
「い、いや別にっ…」
明らかに挙動不審なおっさんに思わず嗤ってしまう。
こんな反応をしたら俺じゃなくたって気づく。
『お前、引っかけたな?』
目の前にいるおっさんがゴン達を騙したんだ、ってな。
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