第1章 Prologue
部屋の中にまで聞えてくる激しい雨音と雷の音。
電気をつけていない部屋が、時々雷で薄ぼんやりと照らされる。
いつもと違う薄暗い部屋に恐怖を感じた私は、ベッドの上で毛布にくるまって震えていた。
一際大きな雷の音でついに耐えきれなくなり、足元に転がっていたお気に入りのぬいぐるみを胸に抱いて、両親の姿を求め走って部屋を出た。
ダイニングへ続く長い廊下を歩いていると、嗅ぎなれない錆びた鉄の匂いが鼻を突いた。
それは両親がいるはずの部屋に近くなる程濃さを増し、それに伴うように私の鼓動も早さを増していく。
本能が警鐘を鳴らしていた。けれど、幼い私は足を止める事をしなかった。
今思うと、いつも通りの笑顔を見せる両親を見て、早く安心したかったのだと思う。
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