第4章 マラソン×再会×新たな出会い
「こちらへどうぞ」
男の人はそう言って薄暗いトンネルのような通路を歩き出す。
「さて、一応確認しますがハンター試験は大変厳しいものであり、運が悪かったり実力が乏しかったりすると怪我をしたり死んだりします。それでも構わないと言う方のみついて来て下さい」
他の受験者達がその後に続き、もちろん私も絶を解いてその後を追う。
「承知しました。第一次試験参加者405名、…ですね」
狭い空間に響くたくさんの足音を聞きながら歩いていると、不意に突き刺す様な視線を感じた。
ここに来た時に向けられた奇異の目とは違う、鋭く尖ったナイフみたいな視線が気になってそちらに目を向ける。
そこに居たのは、片手にスケボーを持って歩く銀髪の男の子。
その、こちらを睨むように見つめていた蒼い瞳が大きく見開かれた。
私が自分の視線に気付いたことに驚いているのだろう。
だって、私は普通の人からすると“か弱い女の子”に見えるのだから。
「なんだっ?」「スピードが…」
男の子のことは少し気になるが騒ぎ出した周りの声に促されて視線を前に戻す。
どうやら先頭集団が走り出したようで、それに合わせて私も少しスピードを上げる。
と言っても、まだ普通の人が余裕で付いて行けるくらいの速さだけど。
「申し遅れましたが私、一次試験担当のサトツと申します。これより二次試験会場へご案内致します」
「既にお気づきの方もおありでしょう。二次試験会場までついて来ること、これが一次試験でございます」
そう言う試験なのかと一人で納得していると、私の進む先で数人の受験者が立ち止まった。
こちらを見ながら嗤っているそいつらに軽く溜息を吐き、足の動きを緩める。
横を通り過ぎて行く他の受験者達に哀れみの目を向けられ、さらに苛立ちが増す。
しばらくしてたくさんの足音が遠ざかると、目の前の男達は笑みを濃くして武器を構え始めた。
「クククッ……なぁ嬢ちゃん、来る場所間違えたんじゃねぇのか?」
「痛い目見ないうちにとっととお家へ帰んな!」
そいつらの吐いた言葉は概ね予想していたものばかりで、また溜息が漏れる。
それが癪に障ったのか、唸り声を上げてこちらに向かってくる奴らが私と同じハンター試験受験者だなんて考えたくもなかった。
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