第3章 私の本丸だ
「……そうだな。
『はじめまして』だな」
歯切れの悪い彼の言葉に違和感を感じる。
泣きそうな顔をしている骨喰藤四郎に対し、何も言えずオロオロとしていると特徴的な癖の青い髪が障子のあいだからひょっこり現れた。
「……歌仙、目覚ましたんだ」
「お小夜!!」
部屋に入ってきた馴染みの短刀は、彼の背丈には無理のある2振りの刀を腕に抱いていた。
ヨタヨタと自分のそばに歩み寄ってきたお小夜を刀ごと抱きしめると、「苦しいです」と返されさらに腕に力がこもる。
「お小夜…お小夜ぉ……」
歌仙兼定が独特の癖の着いた青い髪に頬ずりを繰り返していると、骨喰藤四郎が小夜に声をかけた。
「そう言えば小夜左文字は短刀部屋にいなかったな。
短刀の分のにぎりめしを置いてきたから食べるといい」
その一言を聞き、腕にお小夜を抱いたままぐるりと骨喰藤四郎に顔を向けた。
「このにぎりめしはキミが用意してくれたのか?」
「あぁ、俺と兄弟と臨時の審神者がにぎった。
茶も用意したから飲むといい」
『臨時の審神者』と言う聞きなれない単語に眉を顰めると、お小夜が腕の中で身じろぎ「いい加減離してください」と抗議を口にした。
「あぁ、すまないお小夜。
して、その『臨時の審神者』と言うのは??」
お小夜から慌てて腕を離し、こちらを見ていた骨喰藤四郎にそう問う。
「石川の行動に対し演練先の審神者から声が上がったらしい。
その結果、臨時の審神者が家に派遣された」
その…信用出来るのかい?」
「まったく。
その臨時の審神者様にさっき合いました。」