第3章 私の本丸だ
「骨喰くん上手い上手い。出来たのはこっちに並べて行ってね」
「あぁ、わかった」
「くっ、なんで兄弟のはそんなに形が綺麗なんだよ!!」
綺麗な三角のおにぎりを並べて行く骨喰くんとは対照的な、歪なおにぎりを見つめ鯰尾くんは頬をふくらませた。
「鯰尾くん、別に無理して三角にする必要は無いんだよ?」
釜戸での炊飯は初めてにしては上手く炊き上がったお米をお櫃に移し、私がおにぎりを作っていくと2人は「魔法みたいだ」と言ってキラキラした目で私の手元を見つめていた。
そこで、手伝いを頼んでみるたのだ。
「兄弟、なんだその形は……」
「へへへ、丸くするのは俺の得意分野だからねー」
「食べ物で遊ぶのは些か行儀が悪いぞ……」
「わー、まるで爆弾おにぎりだねー。」
和気あいあいとおにぎりを握っていると、鯰尾くんがポツリ呟いた。
「俺、顕現してからこんなに笑ったの初めてです!!」
「そうだな。 俺達が顕現した頃には既にあの状態だったからな」
その言葉を聞いて胸の奥が締め付けられた。
「……大丈夫、これからはもっと楽しくなるから」
私の言葉に「期待してます!!」と笑顔で返した鯰尾くんに同意するように骨喰くんも頷いた。
その後も3人で大量におにぎりを握り続け、作りすぎたかと思う程の量が出来上がっていた。
1人2個の計算で梅干しと漬物を共に盛り付けていくが、随分余ってしまった。
「余った分はどうしよっか……」
「余ってませんよ」
「え、でも……」
「先に盛り付けた分をみんなの部屋に持って行っちゃいましょう。その後、詳しくお話しますから」
「……わかった」
まだこの本丸の問題は山積みのようだ。
とりあえず、盛り付けた分をお盆に乗せて3人で運んでいく。
最初は様子見を兼ねて、短刀の子達の部屋へ向かった。
襖を開き中を除くと、薬研くんが他の短刀の子達を集めて話していた。
取り込み中かもしれないが、2人が一生懸命作ったのだからせっかくならできたてを食べてほしいと考え声をかけた。
「お取り込み中すみませんが、少しよろしいでしょうか??」
一斉に振り返った短刀達の顔を見て言葉が漏れる。
「かわいい……」
最初に見た時は必死で1人ずつ確認してられなかったけど、みんな目がクリクリで人形かと思うほど可愛らしい顔をしていることに気が付いた。