第2章 「夏」~想い~
花火が終わった次の日、いよいよ太陽君に歌を聴かせる日がやってきた。
太陽君の病室の前に来ると、急に昨日のことを思い出した。
「ひまは太陽君のことが好きなんだよ~好きなんだよ~…だよ~…」
頭の中で繰り返し聞こえてくる瑠璃の声。
考えただけでまた、顔が熱くなってゆく。
恥ずかしさのあまり、病室の前でドアを開けられずにいた。
すると急にドアが開いて、栗色の髪女の人がでてきた。
ひま「あっ…」
女の人「あら、こんにちは!」
ひま「こ、こんにちは。」
誰だろう…?と思っていると、その女の人は私に
女の人「もしかして、あなたがひまわりちゃん…?」
どうやら、私のことを知っているようだ。
ひま「はい、そうですけど。あなたは…?」
女の人「あぁ、すっかり挨拶が遅れてしまって、ごめんね。私は太陽の母です。」
そう言うと、ぺこりと頭を下げた。
私も「あっ、どうも」と言いながらお辞儀した。
言われてみれば、太陽君と目元が似ている。
太陽母「太陽ったら、ひまわりちゃんの話をいっつもするもんだから、私も会ってみたいな~と思ってたのよ。それにしても、背が高いのね…!」
背が高い女の子をあまり見たことがないのか、私を見て驚いていた。
太陽君のお母さんは続けて、
太陽母「太陽、ひまわりちゃんと会ってからすごくいきいきしてて、私も安心したわ。これからもよろしくね。」
太陽君のお母さんはにっこり笑ってそう言った。
ひま「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
と言っていると、
太陽「母さん、余計なことしゃべるなよー。もう大丈夫だから、帰っていいよ。」
と、向こうから太陽君の声が聞こえてきた。
太陽母「はいはい、わかりました~。さっさと帰りますよ~」
と、つーんとしながら言った。
すると、太陽君のお母さんは私にしか聞こえない声で、
太陽母「あんな事言っといて、本当は寂しがり屋だから、面倒みてあげてね。」
私が「はい」と返事をすると、
太陽「母さん、聞こえてるよ~。」
と、太陽が言った。
私たちの会話が聞こえていたようだ。
2人で見合って、思わず笑ってしまった。