第39章 復職
○○は物事を深く考える型ではない。
しかも、紬との直接的な接触により頭に血が昇っている状態である。
ということは、だ。
以前、ポートマフィアに属し、今や『裏切り者』だと云うことだけ伝えれば良いのではないだろうか。
そんな裏切り者が堂々と此処に居る事を疑問に思うかもしれないが殺してしまえばーーー。
死人に口無し、とはよく云ったものだと教えれば単純な○○の事だ。簡単に乗っかるだろう。
『裏切り者』ということは間違いない。
行動が怪しいから拷問にかけたらポートマフィアに不利益になることを企んでいた、等とそれらしい事を捏ち上げてしまえば良い。
××は○○に、そう告げた。
想像通り、○○は直ぐに紬を拐う作戦を練り始めた。
○○に紬を始末させる算段を整えた。
あとは、紬を始末した後に○○を殺し、『幹部を私欲のために処刑した反乱分子を始末した』と報告すればいい。
此れで自分の勝利は確定した、と。
××は、ほくそ笑んだ。
誤算だったのは「中原中也」の存在だった。
真逆、「裏切り者」である紬を五大幹部自らが探しに来るなど誰が思おうか。
自分達が引き連れている程度の部下が押し寄せることは××当然、想定していた。
しかし、中也が登場するとなると計画など狂うに決まっている。権力も武力も。何一つ勝てる要素が2人には無いのだから。
○○は××に教えていなかったのだ。
「太宰紬」なる人物に任務を横取りされて功績をあげられた事を連絡したが、その任務を遂行した人間が中原中也だった、と。
昨日の資料の中に二人で行ってきた所業も勿論記載してあったが、それはあくまで紬が『最年少幹部』だったからそれに従っていただけだと重視していなかったのだ。
もし未だ××が生きていたならば、その点を重視して計画を練り直していただろう。
それでも結果は同じになるのだが。
「『利用されたんだよ』って其々を煽って潰し合いをさせる予定だったのに」
「それが手前の十八番だからな。嘘付いてるとは思ってねえよ」
机に積まれた書類を手に取りながら返事する中也。
そう。
××と○○の考えなど紬はあの一時の接触で凡て見抜いていたのだから。
「ねえ」
そうなると別の疑問が生じる。