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【文スト】対黒

第39章 復職


翌日ーーー

「……?」

午後から仕事であった中也は、本部に入った瞬間から何時もと違う雰囲気に疑問を抱いた。



妙にざわついてるな……。浮き足立ってるヤツも居るし。


自分の執務室に入り、愛用の外套と帽子を掛けて椅子に腰掛けたところで部下が入室してきた。

「お早うございます。早速で申し訳ありませんが此方、急ぎで目を通して頂きたい資料です」

中也はおう、と短く返事して資料という名の紙束を受け取った。
暫く無言で目を通した後、紙から目を外さずに口を開く。

「……この殲滅の決行日は」

「其方に記載されている通り、本日の22時です」

「……。」



殲滅ーーー

相手の規模を想定して人員、費用に機材。
間取りの確認や下見。
そして、作戦の段取りや打ち合わせ…。

それら凡てが綿密に取り計らわれる案件といっても過言ではない程、マフィアの中で失敗の許されない仕事の1つである。


その作戦の凡てを記載した書類を「当日」に、
最終確認者である中也に持ってくること等「有り得てはならない」事なのだ。


しかし、この書類を持ってきた部下はあくまでも下級構成員ーーーこの作戦の指揮官よりも下。
中也はこの部下に何を云っても仕方がない事を判っていた。

「なァ」

「……はい」

ーーー判ってはいたが、訊かないわけにはいかないのも幹部の役目なのだ。
中也が声を掛けた瞬間に、顔色を変えてしまった部下に「お前を咎める訳じゃねぇが」と前置きをして問うた。


「この企画書の提出期日、可笑しくねぇか?」

「……○○幹部が昨日の夕、首領から直々に与えられた任務だと仰っておりました」

「昨日の、夕…」

中也の眉がピクリと動く。

「はい。中原幹部は○○幹部が請け負っていた『△△社との取引』が難航していたのをご存知でしょうか?」

「ああ。△△社の会長は高齢だが頭がきれる。生半可なプランや提案なんざ首を縦に振らねェ事で表でも裏でも有名だからな」

書類を置いて、部下の方を見る。

「それくらい気難しく、首領も考えあぐねる程のお方が、昨日の昼過ぎに我々のプランに賛同する連絡を入れてきたそうです」

「!」

中也が目を見開いた。
五大幹部である中也がこれ程に驚く事を、自身の直属の上司がやってのけたのだと確信した部下は自信が戻ってきたのか、顔色を元に戻していた。
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