第38章 悲劇なる日曜日
「《殺人結社》?」
武装探偵社。
何時もの会議室。
「はい。政府より緊急の要請です。先ず被害者の写真を」
白板に資料を掲示しながら国木田が説明を始める。
その説明を聞いているのは敦、与謝野、谷崎、宮沢、鏡花、乱歩、紬ーーー調査員達だ。
「……非道い」
掲示された死体の写真を見て、思わず敦が顔をしかめる。
「被害者は横浜の若手議員。会議を中座した後五分後に此の状態だ発見されました」
敦が見ていた写真を指しながら国木田は死体の説明を始める。
「見ての通り議員は上半身の皮を剥がれ裏返しに着せられています。ご丁寧にも皮は高級襟衣の縫製を施され襟布や袖飾で装飾。喉の裂傷と拘束痕から皮を剥がれる間も生存し絶叫していた可能性が高いと」
「大した趣味の良さだねェ」
あまりの悲惨な状況説明を聞いて与謝野が呆れたように呟く。
「同一犯による犯行が今週 四件 起きています」
「四件も!?」
「沿岸警備隊副司令 頭部に腐食性劇薬を浴び骨まで溶かされて死亡。死因は激痛からくる神経原性ショック」
「国防省・対外治安局の局長秘書 口腔から空気圧縮機で超高圧空気を導入され毛穴から全血液と神経を吹き出し死亡」
「最後に軍警・異能犯罪対策課の一等軍吏 ゛自殺草゛とも呼ばれる南米原産の激痛植物を腋に植えられ密室に放置。自分の骨が露出する程掻き毟った後自ら頭を壁に打ち付け脳挫傷で死亡」
「う……」
四件起きた死亡事件を詳しく説明する国木田の言葉に思わず顔をしかめる敦。
「成る程。《天人五衰》ーーー犯人からの伝言か」
「?」
乱歩の言葉に疑問符を浮かべる谷崎。
ガチャ
突然開かれる会議室の扉。
「《天人五衰》とは六道輪廻の最高位たる「天人」が死の間際に顕す五つの兆候の事だ」
「社長」
現れた人物、こと福沢が谷崎の疑問に答える。
「衣裳垢膩」衣服に垢と脂が染み出す
「頭上華萎」頭部の華鬘が萎れ腐る
「身体臭穢」身体が汚れ臭い出す
「腋下汗出」腋の下から汗が流れる
「じゃあこれは……「見立て」型の連続猟奇殺人……」
説明を聞いて谷崎が理解する。
それと同時に敦も何か悟ったようだ。
「待って下さい。殺人は四件なのにーーー」
「その通りだ。五つの衰の内「不楽本座」が未だ無い」
国木田が肯定する。