第35章 回向 其の壱
「貴様の何時もなど知らぬが、紬さんは正常だ」
「え?」
「寧ろ」
振り返り、敦を正面にとらえた状態で云う。
「太宰さんと同じ様子の方が『異常』だ」
「!?」
敦は驚く。
その理由が理解できない芥川は特に何もすることなく歩き始めた。
僕たちの知っている紬さんの方が異常―――?
初めて会ったときから太宰にそっくりの言動で。
常にニコニコ笑っていて。
そして、吃驚するほどに強くて―――。
でも、時々見せる『今と同じ』一面。
太宰さんが傷付くことを嫌っていて。
太宰さんを傷付ける人に対しては豹変したように
淡々と……攻撃する――――。
「………。」
敦は暫く考えが纏まらなかった。