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【文スト】対黒

第32章 共喰い 其の壱


とある病院―――とある病室。

「社長の検査終わったよ」

その病室から探偵社の女医、与謝野が出てきながら他の探偵社のメンバーに告げる。


「概ね敵さんの申告通りだね。異能に生命力を吸われてる。意識が戻るかは微妙なトコだよ」

与謝野のこの言葉を受けて谷崎が立ち上がった。


「社長を扶けましょう国木田さん。マフィアの首領を殺すんです」

「……確かに社長の死は絶対に避けねばならん。だが……」


国木田は考える。


太宰は別の病院で手術中……
紬は何故か連絡が着かずに行方不明……

太宰抜きで対マフィアなど考えられんぞ


「与謝野女医、乱歩さんは?」

「社長の付き添いさ。相当取り乱してたよ 無理もないけどね」


一頻り考えが終わると、この場に居ない残りのメンバーの確認をする国木田。

「太宰が瀕死なンだ―――紬も動けはしないだろう」

「「……。」」



せめて紬だけでもこの場に残ってくれていればマフィアと衝突しても勝機があると云うのに……!!



そう思いこそすれど、それが無理な事くらい誰もが判っていた。
以前、同じ様な状況に為った際にも紬は一番に戦闘から外れた。
そして行方を眩ます。

―――今と全く同じ行動だからだ。


バンッ!

「大変です!」

国木田が眉間に皺を寄せて考えているところに大きな音を立てて敦が駆けつける。


「マフィアに建物を包囲されています!」


見張りをしていた敦の伝令は国木田を現実に戻すには充分だった。

「もう嗅ぎ付けたなか……!」

「正門と裏口も固められてます!」


如何する?

敦の報告に余計に考えが纏まらない。


「焦るな 国木田」


そんな国木田の思考を別の声が遮った。

「それでも社長の弟子か」


現れたのは武装探偵社の頭脳―――江戸川乱歩

「乱歩さん大丈夫かい?」

取り乱していた筈の乱歩の登場に与謝野が驚く。

「社長に"しっかりしろ"って云われた」

「意識が戻ったのかい?」

「いいや。でも聞こえたんだ」

与謝野の問いに否定して国木田を指す。


「指示を出せ、社長代理」


この一言で国木田の顔付きが変わった。


「必要な情報は僕が凡て読み切ってやる」


思考の纏まらない、迷いの顔から
強い意思を持つ顔へと――――。

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