第30章 Addict
太宰紬は独りで街を歩いていた。
「ふぅ。中々、愉しい一日………」
その動きをピタリと止める。
「で、終わらせたいんだけどねぇ」
ゆっくりと振り向きながら言葉を続けた。
その言葉に対し、紬の振り向いた先から返事がやって来きたのだ。
「終わらせたらいいじゃないですか」
「……君に遭ったのに?冗談だろう」
紬の前に立つ人物にヘラッと笑い、
「それに関して特に言葉を返す気はありません」
「そうか。では」
直ぐに鋭い目で睨みながら、云った。
「『死の家の鼠』の頭目自らが態々、私に一体何の用だい?」
紬に話し掛けた、
自分の兄が『魔人』と称する人物―――
フョードル・ドストエフスキーは不気味な笑顔を浮かべた。
「貴女に用なんて1つしかないじゃありませんか」
「……。」
2人の会話は暫く続き、
終えると紬は険しい顔のままその場を去ったのだった。