第30章 Addict
休日にて。
太宰紬は独りで街を歩いていた。
『『私と居なくても良かったのでは』という想像を一瞬でもさせないために―――』
「……。」
自分の手を見ながら何かを考える。
暫く、見詰めて溜め息を着いた。
「……考えても仕方ない、か」
何時も通りに考えても答えが出ない事に自嘲しながら紬は歩き出した。
「おや?」
そして、見知った人物が目に入り、足を止める。
紬は面白そうな場面に遭遇したと云わんばかりにニヤリと笑って、声を掛けることを選んだ。
「教えて下さい!!」
「ん……ん?」
「いや、えっと。あの……はい」
その場面はポートマフィアの人間が武装探偵社の職員に土下座をしている光景だった。
「おーい、敦君ー国木田君ー」
「「「!」」」
バッと国木田が勢いよく声の方を向き、遅れて敦と土下座をしている人間が振り向く。
「「紬(さん)」」
「あ…貴女はっ…!」
にこやかに手を振りながら近づいて、紬は土下座している女性にも声を掛けた。
「おや。樋口君だったかな?随分と奇抜な体勢だねぇ」
「~~~っ!」
反論しようとも思った樋口だったが、出来なかった。
『悪いことは云わねぇ。太宰は女に甘いが紬は違う。関わらない方が身のためだぜ』
自分の上司がいっていた言葉。
そして、未だに残されいた、この兄妹についての資料に載っていた暴虐非道の数々―――。
この2つが一瞬にして頭を支配したからだ。
そんなことお構い無しの彼女は一度、樋口を見てクスリと笑った後アッサリと視線を国木田に戻す。
「こんな街中で女性に土下座させるなんて国木田君も鬼だねぇ」
「俺が強いた訳じゃない!!」
紬の態とらしい演技と大声で、通行人がチラチラと此方を見ながらコソコソ話して去っていく。
それに気付き、何時も太宰にするように頭をギギギ…と音が聴こえそうな程に鷲掴みにする。紬がケラケラ笑いながら「冗談さ、ねえ?敦君」と云って漸く敦が止めに入った。
「それで?本当は何をしているんだい?」
紬が髪を整えながら3人に問う。
そうだった!と云わんばかりに敦が樋口に話始めた。