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【文スト】対黒

第29章 父の肖像


とある日の探偵社―――

「敦君!この依頼行っといて!」

「え?でも依頼は乱歩さんに…」

ピラッと依頼の要項の書かれた紙を敦に提示しながら乱歩が云う。
その紙を乱歩に押し付けて乱歩が手にしたのは洋菓子。


「無理!今丁度焼菓子が熱くて美味しいから!」


キッパリと云う乱歩を同じテーブルで紅茶を嗜みながら苦笑して聞いている紬。
乱歩に勧められて焼菓子も食べながら紬も敦をみる。

「『良かった』じゃないか、敦君」

「?」

紬の言葉の意味がわからずに依頼の用紙に目をやって支度を始める。

そして、既に茶菓子を食べ終えてソファに横臥する乱歩の元にやってくる。


「乱歩さん。矢っ張り僕に出来るとは迚も……」

「もうこれは君の事件だよ。じゃ 助言だ」


乱歩はピッと指を指して云った。



「困ったら『花屋』を捜せ」



それだけ教えると乱歩はゴロンと横になった。


敦は行ってきますと云い、探偵社を後にする。

「紬ー」

「何です?乱歩さん」

其れを見届けて乱歩が食器を片して戻ってきた紬を呼び止める。


「情報提供者の確保」

「手配しておきます」


ニコッと笑って席に戻る。
その隣に座ってきたのは不機嫌な顔をした兄。

「……誰に頼む心算?」

「芥川君」

「ならいい」

紬が電話を掛け始める。その間も隣でジーッと紬を監視する太宰。
用件を伝え、電話を切ると紬は太宰に向かって云った。

「手配はしたから後は治がして」

「厭かい?」

「不適任だろう。私は治以外の死に関心など無い」

「……。」

はぁ、と息を小さく吐いて紬は自分の仕事を始める。
そんな紬の腕をグイッと引っ張る太宰。

「治?」

「一寸、出るよ」

「……。」

紬は反論しようとして、止めた。
兄の顔がそれを許さない表情だったから。



紬は溜め息を着いて大人しく太宰に続いて探偵社を後にしたのだった。

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