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【文スト】対黒

第3章 人生万事塞翁が虎


虎の攻撃を身軽に避ける太宰。

ところが

「おっと」

壁に後退を妨げられる。

太宰は虎を正面で捕らえる。

「獣に喰い殺される最期というのも中々悪くはないが」

スッと左手を伸ばす。

「君では私を殺せない」

その手が虎の額に触れた瞬間

「私の能力は――あらゆる他の能力を触れただけで無効化する」

虎から人に―――敦の姿に戻った。

疲れているのか。はたまた、違う理由が存在するのか。

「…………」

ポスッと太宰にもたれ掛かるように倒れ込む敦。
勿論、意識は無い。

「男と抱き合う趣味はない」

直ぐに敦を投げ棄てた。

「治……もう少し優しくしてあげ……」

「おい 太宰!」

一部始終観ていた紬が抗議の声を上げている途中に、倉庫の入り口に現れた人影が声をかける。

「ああ 遅かったね。虎は捕まえたよ」

その人影に笑いながら応じる太宰。

「!その小僧……」

現れた人影、こと国木田は敦の姿を見て立ち止まる。

「じゃあそいつが」

「うん 虎の能力者だ」
「変身している間の記憶がなかったんだね」

太宰の隣に歩み寄りながら説明に加わる紬。

「全く――次から事前に説明しろ。肝が冷えたぞ」

そう言いながら手にしているのは1枚のメモ。

紬が書いて、太宰が渡したものだ。


『十五番街の西倉庫に虎が出る 逃げられぬよう周囲を固めろ』


「おかげで非番の奴らまで駆り出す始末だ。皆に酒でも奢れ」

現れたのは男が二人と女が一人。

「なンだ 怪我人はなしかい?つまんないねェ」
与謝野晶子――能力名『君死給勿』

「はっはっは 中々できるようになったじゃないか太宰。まあ僕には及ばないけどね!」
江戸川乱歩――能力名『超推理』

「でも そのヒトどうするんです?自覚はなかったわけでしょ?」
宮沢賢治――能力名『雨ニモマケズ』

「どうする太宰?一応 区の災害指定猛獣だぞ」
国木田独歩――能力名『独歩吟客』

「うふふ 実はもう決めてある」
太宰治――能力名『人間失格』

「ああ…成程 そういうことか」
太宰紬――能力名『終焉想歌』


太宰は敦をチラリと見て

「うちの社員にする」


笑顔を浮かべて告げた。


「はあぁああぁ!?」

国木田の叫び声が響き渡った。


中島敦――能力名『月下獣』
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