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【文スト】対黒

第3章 人生万事塞翁が虎


「人食い虎。矢張り手に負えなくなってきたのだね。」

「ああ。」

夕陽が辺りを真っ赤に染める時刻に、道中を歩く影が二つ。


「にしてもお前の片割れはどうにかならんのか。」

国木田と

「ははは。また河にでも飛び込んだかい?」

太宰の妹、紬だ。


紬は本日、非番だった。

丁度、買出しに出掛けていたところに国木田と出会し、行動を共にしている。


『仕事の前に太宰の回収をせねばならん。付き合え。』

『治が行方を眩ますなど日常茶飯事ではないか。私が行く必要あるかい?』

『お前の兄だろうが。連帯責任だ。』


半ば、無理矢理にだが。

「お陰で予定が大幅に狂って……」

「国木田君。」

「あ?」

言葉を遮られて苛立つも、
あれ。と指差された方向を確認した瞬間に収まった。


紬が指差した先は自分達と反対側の河川敷。


そして、其処に居るのは探していた人物と、

「誰かと一緒に居るね。」

「ああ。誰だ?」

見知らぬ少年だった。


直ぐに斜面を降りて、太宰の正面の位置に立つ国木田。紬もそれに続く。


そして、大声でおォーいと呼び掛けて

「こんな処に居ったか この唐変木」

その声に反対岸に居た太宰に話し掛けた。


「おー 国木田君ご苦労様」

手を振って反応する。

「苦労は凡てお前の所為だ この自殺嗜癖!お前はどれだけ俺の計画を乱せば―――」

「紬ー。」

国木田の訴えを無視して、隣に立つ紬に笑顔で手を降る。
勿論、紬も笑顔で返していた。

「お前も笑顔で応じるな!」

「私には怒る理由が見当たらないからね。」

サラリと云う紬に溜め息を着く。

「そうだ君。良いことを思いついた。彼は私の同僚なのだ。彼に奢ってもらおう」

「へ?」

「聞けよ!」

向こうは向こうで少年と話しており、話を全く聞いていない。

「君、名前は?」

「中島……敦ですけど」

「ついて来たまえ敦くん。何が食べたい?」

太宰の後ろをついてくる敦と名乗った少年。


「国木田君の奢りが決定したようだね。」

「は?」

紬の一言で対岸の会話に耳をそばだてる国木田。

「良いよ。国木田君に三十杯くらい奢らせよう。」

「俺の金で勝手に太っ腹になるな太宰!」
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