第24章 神隠しと云う名の
―――
紬は人気の無い場所に来ていた。
ピクッ
新しく生まれた人の気配の方を向き、声を発する。
「随分なお誘いの仕方だね」
「此れなら絶対に来てくれると思ったよ」
ニコニコしながら現れたのは軟派男。
持っているのは太宰の携帯電話だ。
それを紬の方に放り投げる。
「治は」
「此処には居ないよ」
「そんなこと、聞かずとも判っている。どうしてるか訊いているのだよ」
「大人しく檻の中で拘束中だ。今はね」
「神隠し騒動に乗じた人攫いの主犯は君だったか」
「へぇー?そんなことまで知っているのか。頭がいいねぇ。益々帰せないけど」
「治を連れて帰るまでは帰る気など無いからね」
「その大好きな兄の前で僕専用に成るまで、しっかり調教してあげるから」
「悪趣味極まりないね」
はあっと溜め息を着く。
「君、ポートマフィアの出なんだろう?」
「ああ。数カ月ね。何で知ってるの?」
「ふふっ何でだと思う?」
「まあ後で聞くよ」
そう云うと一斉にガスが噴射する。
「!?」
仕舞った!催眠ガスか!
「ゾウすら一瞬で落とす強力な催眠ガスだ」
ガスマスクをつけて説明するが。
トサッ
その声が紬に届くことはなかった。
ガスが落ち着くまで待つ。
辺りの視界が良好になる。
男がニヤつきながらマスクをはずし、紬を見た瞬間
ドゴオッ!
巨大な岩が男の横すれすれを通り過ぎていった。
「そいつに触んなよ。後が色々と面倒臭ぇ」
「!」
現れた男は食事処で紬を連れ去った男だ。
何処かで見たことがあるような………
記憶を精一杯振り返る。
そしてその正体に気づいた瞬間、男は青褪めた。
「ポートマフィアの中原中也」
「へぇー知ってたか。関心だなあ、おい」
獰猛な笑み。
男は慌てて何かの機械のスイッチを押した。
ゴゴゴゴゴゴ……
「あ?何だあ?」
急に地面が揺れたかと思うと
「うおっ!?」
無くなった―――。