第23章 騙し、見抜かれ、騙されて
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着替えを済ませて、買い物をしに歩いている道中。
「同じ目線も良いけれど矢っ張り、この位置が良いね」
「そう?」
紬の頭を撫でながら太宰が話す。
「にしても先刻は一体どうしたんだい?」
「ん?何が?」
「敦君や谷崎君も居たのにキスなんて」
「ああ、あれね」
撫でる手を降ろす。
「国木田君への当て付け」
「へぇー。この間の話だけじゃ足りなかった?」
「みたいだねぇ。紬の事が心配で仕方がなかったよ」
「それは只の性分だろう?国木田君は優しいからね」
紬の言葉にムッとする太宰。
「この間の件も、紬がヤられているかどうか。紬が嘘を付いたとしても私がナオミちゃんにだって確認する事など考えたら判るだろう?」
「ナオミちゃんも嘘をつく可能性もあるって思ったんでしょ」
「私に見抜けない嘘なんか無いよ」
「それを知っているのは私だけだねえ」
「……国木田君の肩を持つの?」
「一般論を述べただけだよ。そんなつもりは無い」
機嫌の直らない兄に苦笑する紬。
そして腕を絡ませる。
「治が国木田君を警戒してることは判ったよ」
「……。」
「大方、私に化けている最中に中也と共通する『何か』をされたんでしょ」
「中り」
そう云うと紬の首筋に口を寄せて
「っ…」
吸い上げる。
「明日からタートルネックのシャツを着ないと駄目になるだろう?」
「見せ付ければ良いでしょ。右隣の席の人に」
「そんなに怒ってるのか。やれやれ。国木田君は何をしたんだか」
絡ませた腕に頬を寄せて苦笑するしか出来ない紬だった。