第21章 縺れた糸が解ける時
「有難うございます。与謝野さん」
「役に立ったンなら良かったよ」
「こんなに話すのは初めてです」
「まあ今の紬の話は内容が濃すぎて中々出来るもンじゃあ無いけどね」
「ふふっ。それもそうですね」
苦笑しながら返事する。
「ンで?」
「はい?」
「別に今回が初めてじャないンだろ?避妊に失敗したのかい?」
ふと、視線をカーテンに向ける紬。
「……まあ。その中也との一件で、本気で孕ませる気で居るみたいだから」
「………何回ヤったンだい?」
「毎日」
「……。」
ここまでされていて、今日の今日まで自分に向けられている感情が『妹依存』ではないと云うことに気付かなかったのか。
再度、呆れ果てる与謝野。
「そりゃ……妊娠してるかもねぇ」
「ですよね」
―――
コンコンッ
「失礼しまーす」
軽い調子で医務室に入ってくる、ベッドに眠っている女性とそっくりな男。
「紬なら寝てるよ」
「そうですか」
それだけ聞くと紬の元へ向かおうとする太宰。
「待ちな、太宰」
「はい?」
与謝野の言葉でピタリと停止する。
「寝不足、アンタのせいらしいじゃないか」
「おや。紬が話しました?」
「ああ。結構聞いたよ」
「へぇー紬が人に自分の事を話すなんて」
「そんだけ身籠ってないか気にしてンじゃないのかい?」
与謝野が核心を突くように太宰に言い放つ。
しかし、太宰はふふっと笑うだけだった。
「気してればいいですよ。私の事だけを考えてれば善い」
「……。」
妹も妹だが兄も兄だな、こりゃ。
「それに」
「……それに?」
太宰はフッと笑って「いや」と云う。
何か思う事があったのだろうか?
「まあいい。太宰、1つだけ云っておく」
「何です?」
「若し、紬が身籠っていた場合」
「場合?」
与謝野がため息を付きながら太宰を見る。
「安定期に入るまではヤれないからな」
「………。」
博識のこの男のことだ。知らないわけがない。
「考えないで行動すると辛い思いをするのはどっちだろうねえ」
与謝野はニヤリと笑って云った。
「………まあ、その時はその時ですよ」
言い終わると太宰は紬のベッドに向かった。