第2章 入社試験
紬が入社してから早くも2日。
「紬、備品の買い出しに付き合え。」
「あ、後3分くれないかい?此処まで終わらせてしまうから。」
「ああ。」
予想していた未来とは違い、心穏やかに仕事をすることが出来ている国木田。
それは備品を買いに行く余裕が有る程であった。
勿論、依頼が少ないのもあったのだが――。
「ふう。待たせてしまったね。」
「いや、いい。行くぞ。」
紬の仕事の捌け具合に、頭痛の種が芽を出さなかったからだ。
事務所の扉に手を伸ばした時だった。
「国木田。」
名前を呼ばれ、立ち止まる。
「社長。」
「済まないが乱歩が遠出する。出張旅費も下ろしてきてくれ。」
「判りました。」
そう云って手渡されたのは『武装探偵社』名義の通帳と印鑑。
社長、福沢の眼が国木田の隣に居た紬に向く。
「紬、太宰はどうした?」
「うーん。私の勘が中っていれば今頃は何処かの空き地の土の中ですよ。」
「そうか。谷崎に捜しに行かせるとしよう。」
「いやー愚兄がお手数をお掛けしますね。」
ふふと笑いながら国木田に続いて探偵社を後にした。
「お前達は似ているが似てないな。」
「え?」
「太宰と違って真面目に仕事に取り組む上に、早い。既に事務員の仕事の数倍を粉していると評判だ。」
「過大評価だよ。照れるね。」
「何より『良い川だね』等と飛び込んだりして俺の業務に水を差したりしない。」
「ははは。私もそうしたいのは山々だけど。」
ピクリ。
「俺の業務に水を差す事をか?」
「入水の方だよ。」
サラリと云う。
矢張りこいつも自殺嗜癖か。
「何故、先刻しなかった?」
しなくていい。しなくて良いが気になりは、する。
「治に止められているからだよ。濡れたら服が透けるだろう?」
「それがどうした。」
「一応、女だからね。気を遣ってくれているのだよ。」
「失敗すること前提か。」
「成功しても私の下着姿が世間の目に触れてしまうのだよ?あ、国木田君は見てみたかったのかい?私の下着姿。それなら今度は飛び込んで……」
「そんなわけあるか!」
笑って云う紬に全力でツッコミを入れる。
「ふふふ。国木田君は面白い人だね。」
はぁ。溜め息を着いて前を向く。