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【文スト】対黒

第18章 双つの黒


「何時もの事だろう?」

アッサリと云う兄に溜め息を着く。

「そう。確かに何時も私が後で回収に行っていたしね」

「………。」

ヒョイッと中也を背中に担ぐ。

「怒ってるけど」

「云われなくとも判っているよ」

兄をあしらい、中也の懐から拝借しただろう通信機の電源を入れる。

「あー………聴こえてますかー?」

ザザッ

『……太宰君かね?』

応答がある。
聞き覚えの在る声の主に安堵して話を続ける。

「やあ広津さん。久しぶりー」

『君も元気そうだな。して、用件は?』

「終わったから拠点を」
「迎えに来て欲しいのだけど待機班に連絡してくれない?」

『!太宰君も居たのか……直ぐに向かわせよう』

紬の声に被せるように太宰が横から用件を伝える。

「先に帰ってていいけど」

「紬が居ないのに先に帰っても出来ることがない」

そういうと紬の背中から中也を剥ぎ取る。

「私が居なくとも出来ることは山のように在る筈だけどねぇ」

やれやれと云いながら歩き出す。
もう一人の眠っている子供を回収するためだ。

「無いよ」

「そう」

中也の代わりにQを抱えて太宰の傍による。

「……それも此処に置いて」

「はいはい」

足元に転がした中也の隣にQを置く。

そして倒れている樹に腰掛けた。
先に座っている太宰の肩に頭を預ける紬。

「少し休んでも?」

「構わないよ。帰ったところで紬は寝れないからね」

「それはいいけど……迎えが来るまで此処に居てよ」

「判っているよ」

太宰が頭を撫でながら笑うと安心したのか目を閉じる。


「君達が早く去ってくれれば中也達なんか置いて帰れたんだけど」

「云われなくてももう去るよ」

黙って一連のやり取りを観ていたスタインベックに太宰が嫌味言を云う。

「……君達は似ているね。兄妹?」

目を閉じて寝息を立て始めた紬を指差して訊く。


太宰は少し考えてから


「秘密」


紬を抱き寄せて、云った。
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